はじめに|働きたいのに働けないという現実
企業は人手不足に悩み、採用活動に苦労しています。
一方で、働く意思があるにもかかわらず、子どもの預け先が決まらず、仕事に就くことができない人もいます。
先日、浜松市から届いた「保育施設入園保留通知」を目にしました。

2026年11月1日付の入園選考で、希望した保育施設への入園が保留となったという通知です。理由は、施設の受入可能人数が埋まっており、保育の必要性を点数化した選考でも、ほかの申込者が優先されたためでした。
これは、保育の必要がないと判断されたわけではありません。
子どもを預ける必要がある。それでも、受け入れてもらえる枠がない。
この現実を見て、私は改めて考えました。
企業は人が足りずに困っている。働きたい人もいる。それなのに、働くための環境が整っていない。私たちの社会は、この矛盾をそのままにしてよいのでしょうか。
1.少子化が進んでいるのに、なぜ保育園に入れないのか
日本では少子化が進み、子どもの数は減少しています。
しかし、子どもの数が減れば、すべての地域、すべての年齢で保育施設に余裕が生まれるわけではありません。
保育園に入れない背景には、いくつかの要因があります。
* 地域によって保育需要に偏りがある
* 0〜2歳児など、年齢によって必要な受入枠が異なる
* 保育士を確保できず、施設の定員まで受け入れられない場合がある
* 希望する入園時期や施設によって、利用できる枠が限られる
つまり、問題は単純な保育施設の数だけではありません。
保育を必要とする人が、必要な場所と時期にサービスを利用できるかどうか。ここに、制度を考えるうえでの重要な課題があります。
行政が公表する待機児童数が少なくなっても、希望する施設に入れず、仕事や生活の計画を変更せざるを得ない家庭が存在するなら、その実態にも目を向ける必要があります。
制度上の数字と、生活する人が実際に感じている不便や困難。その両方を確認することが大切です。
2.企業の人手不足と、働けない人の存在
企業経営において、人材は事業を継続し、売上を生み出すための重要な基盤です。
人手不足によって受注を断ったり、従業員の負担が増えたり、事業の拡大を諦めたりする企業もあります。
その一方で、家庭の事情や保育環境の問題によって、働く能力や意思があっても就労できない人がいます。
もちろん、保育園に入れない人が全員すぐに就職できるわけではありません。本人の希望する働き方、勤務時間、職種、通勤条件なども関係します。
それでも、働く意思のある人が保育環境を理由に就労を断念せざるを得ない状況は、本人だけでなく、企業や地域経済にとっても考えるべき課題です。
人手不足を解消するために、企業は求人広告を出し、採用条件を見直し、外国人材の採用を検討するなど、さまざまな努力をしています。
しかし、採用する側の努力だけでは解決できない問題もあります。
働きたい人が働ける環境を、社会全体で整えることも必要なのではないでしょうか。
3.これからの社会は、何を変えるべきなのか
私は、次のような取り組みが必要だと考えます。
① 保育士の確保と待遇改善
受入枠を増やすためには、施設の整備だけでなく、保育を担う人材の確保が欠かせません。
保育士が安心して働き続けられる給与や労働環境を整え、既存施設でも必要な受入枠を確保できるようにすることが重要です。
ただし、子どもの安全を守るための配置基準を軽視して、人数だけを増やすべきではありません。保育の質を維持しながら、受入体制を整える必要があります。
② 地域や年齢に応じた保育枠の確保
保育施設の総定員だけを見るのではなく、どの地域の、どの年齢の子どもに受入枠が不足しているのかを把握する必要があります。
地域の需要に合わせて定員や人員を調整し、小規模保育や一時預かりなども組み合わせることで、利用できる選択肢を広げられる可能性があります。
③ 企業と行政が連携する
企業が単独で保育施設を整備することは、特に中小企業にとって大きな負担です。
だからこそ、自治体、企業、保育事業者が連携し、複数の企業が共同で利用できる保育サービスや、既存の保育施設を活用した仕組みを検討することが重要です。
働き方や勤務時間に応じて、保護者が利用できる選択肢を増やすことも必要でしょう。
④ 「待機児童ゼロ」だけでなく、実際に困っている人を見る
行政が掲げる目標や統計上の数字は、政策の成果を確認するうえで重要です。
しかし、数字だけでは、希望する保育施設に入れなかった家庭が、実際にどのような影響を受けているかまでは分かりません。
入園保留となった人数、年齢別・地域別の不足状況、入園までにかかった期間、就労への影響なども把握し、対策につなげる必要があります。
大切なのは、統計上の目標を達成することだけでなく、困っている人の状況が実際に改善したかどうかです。
4.保育は、子育て支援であると同時に、社会を支える基盤
保育は、子どもを預かるためだけの仕組みではありません。
保護者が働き、収入を得て、企業が人材を確保し、地域経済が動くための社会基盤でもあります。
もちろん、保育にかける費用と税収が単純に結びつくわけではありません。子どもの安全や健やかな成長そのものにも、大きな社会的価値があります。
そのうえで、保育政策を子育て支援だけの枠にとどめず、労働力確保や地域経済の維持という視点からも考えることが必要です。
人手不足だからといって、採用することばかりを考えていても、働く人が働ける環境がなければ、問題の根本的な解決にはつながりません。
外国人材の受入れや高齢者の就労促進など、さまざまな人材確保策を進める一方で、すでに日本で働く意思を持っている人が、その力を発揮できる環境も整えるべきです。
人材を確保するということは、採用活動だけの問題ではないのです。
5.これからの社会に必要なのは、制度を利用する人の視点
制度は、社会を支えるためにつくられます。
しかし、制度が存在することと、その制度によって困っている人が救われることは同じではありません。
今回の保育施設入園保留通知は、一つの家庭に起きた出来事です。
ただ、その背景には、少子化、人手不足、保育士の確保、地域の保育需要、働く人の生活といった、社会全体につながる問題があります。
誰かが働けない理由を、本人の努力不足だけで片づけてはいけません。企業の採用努力だけに責任を負わせてもいけません。
制度をつくる側、企業、保育事業者、そして地域社会が、それぞれの立場から解決策を考える必要があります。
おわりに|働きたい人が働ける社会へ
人手不足に悩む企業がある。
働きたいのに、子どもの預け先が決まらず働けない人がいる。
少子化が進む日本で、この二つの現実を別々の問題として考えていてよいのでしょうか。
私は、働く意思のある人が、その能力を発揮できる環境を整えることは、個人の生活を支えるだけでなく、企業や地域社会の未来を支えることにもつながると考えます。
保育士の待遇改善、必要な地域への受入枠の確保、企業と行政の連携、実態に即した政策の検証。
一つの対策ですべてが解決するわけではありません。それでも、現場で起きている問題を把握し、制度を利用する人の視点から改善を重ねることはできます。
人手不足を嘆くだけでなく、働きたい人が働ける社会をつくる。
これからの日本には、採用する仕組みだけでなく、人が働き続けられる社会の仕組みが必要なのではないでしょうか。
株式会社ジョブハートは、人材の採用だけでなく、企業が人材を活かし、事業を成長させていくための環境づくりを大切にしています。
人材不足の解決を、採用だけで終わらせない。企業と働く人の双方にとって、よりよい環境を考え続けていきます。







