法律で認められているから、それで本当に良いのでしょうか。

私は、人材派遣という制度そのものを否定しているわけではありません。

専門的な人材を短期間で確保したい企業や、一時的な人員不足を補う場面では、派遣という仕組みは社会に必要な役割を果たしています。

しかし、日本の経済や働く人々の未来を考えたとき、現在の仕組みをこのまま続けてよいのかという疑問を強く感じています。

派遣の仕組みを、簡単に説明します。

例えば、ある会社が一人雇うために40万円の人件費を支払うとします。

正社員の場合

会社

40万円

正社員

会社が支払うお金の多くは、その社員の給与や賞与、社会保険料、福利厚生などになります。

一方、派遣社員の場合は少し仕組みが違います。

会社
⬇ 40万円(派遣料金)
派遣会社

派遣社員

会社が支払った40万円は、

・派遣社員の給与
・社会保険料
・有給休暇の費用
・教育訓練費
・派遣会社の運営費
・派遣会社の利益

などに分けられます。

つまり、企業が支払う金額が同じであっても、派遣社員本人が受け取る給与は、その一部になります。

もちろん派遣会社には、人材募集や労務管理、教育、安全管理など重要な役割があり、それらの費用が必要なのは事実です。

しかし結果として、同じ会社で、同じ仕事をしていても、派遣社員の賃金が正社員より低くなるケースが多いのが現実です。

「同一労働同一賃金」と言われていますが…

現在の制度では、多くの派遣会社が「労使協定方式」を採用しています。

これは、派遣先企業の正社員の給料ではなく、職種や地域ごとの賃金水準を基準として賃金を決める仕組みです。

そのため、「同じ仕事をしているから正社員と同じ給料になる」という制度ではありません。

Screenshot

結果として、企業は同じ仕事を任せながらも、派遣という形態を利用することで、人件費を抑えられる場合があります。

この仕組みが続くと何が起こるのでしょうか。

働く人の所得が伸びない。

所得が伸びなければ、買い物を控える。

消費が減る。

企業の売上が伸びない。

さらにコスト削減が進む。

そして、また所得が伸びない。

この悪循環が何十年も続けば、経済全体の活力は失われていきます。

本当に目指すべきなのは「安さ」でしょうか。

日本企業は、世界でも高い品質を生み出してきました。

しかし近年は、「どうやって価値を高めるか」よりも、「どうやってコストを下げるか」が優先される場面が増えてきたように感じます。

安く作る。

安く働いてもらう。

安く売る。

これだけでは、働く人の所得は増えません。

所得が増えなければ、消費も増えません。

消費が増えなければ、企業も成長できません。

法律で認められているから、それで十分なのでしょうか。

法律は最低限のルールです。

社会が変われば、法律も見直されます。

だからこそ、今問われるべきなのは、

「法律で認められているか」ではなく、

「この制度は、日本の未来を豊かにする仕組みになっているのか」

ということではないでしょうか。

私は、これからの日本に必要なのは、働く人を安く使うことではなく、働く人が正当に評価され、所得が増え、その所得が消費となって経済を回す社会だと考えています。

企業も利益を出し、働く人も豊かになる。

その両立を目指すことこそ、日本が再び成長するために必要な方向ではないでしょうか。

私は、今こそ「人件費はコスト」という考え方から、「人への投資が未来をつくる」という考え方へ転換する時期に来ていると考えています。

Screenshot

Screenshot