日本の出入国在留管理のあり方に、疑問を感じずにはいられません。
今回、インドネシア出身の特定技能1号の女性が、静岡県内で転職先が決まり、意欲的に新たな生活を始めようとしていました。彼女は将来、食品製造の分野で自身の店を持ちたいという大きな夢を持ち、日々努力を続けていたのです。
しかし、転職に伴う在留カードの変更手続きにおいて問題が生じました。新しい職場が、登録支援機関に生活支援を委託するのではなく、自社内で支援責任者を立てる方式を取ろうとしたことで、「要件不適合」と判断され、審査が止まりました。
埼玉県の入管職員は彼女に「一旦取り下げてもらえれば、また申請して大丈夫です。あなたは悪くない」と説明しましたが、その言葉とは裏腹に、審査取り下げと同時に「帰国のための準備期間」としての特定活動ビザ(31日間)
に自動的に変更されてしまいました。
その結果、彼女は新たな申請ができなくなり、日本での生活を断たれ、母国へ一度帰国せざるを得なくなったのです。
正しく支援機関をつけていれば防げた話でしたし、何より彼女自身には何の落ち度もありません。それなのに、本人の努力や生活の基盤が一瞬で奪われてしまった。酷すぎる。自分がそうなったらと
考えた事あるのか?その姿を見て、「AIで処理しても変わらないような形式的な審査」に、人間が関わる意味はあるのかとさえ思いました。
一方で、以前私が支援していたベトナム人の方は、重大な業務上のミス(約800万円相当の損害)を起こし、短期間の給与減額措置を受けただけで不満を感じて退職。別の同業他社に移り、在留カードを変更せずに違法に就労を続けていたにもかかわらず、入管に報告しても何の対応も取られませんでした。それどころか、別の登録支援機関を使って、本人に新しい在留カードを発行していたのです。
これでは、「正しくやる者が損をする」「嘘をつけば何とかなる」と外国人労働者に思わせてしまいます。
本来、日本で働きたいと願う多くの外国人のためにも、そして支援者や雇用主のためにも、真面目に頑張る人が報われる制度であるべきだと思います。
私は制度や法律を守りながら支援をしてきたつもりです。それでも、「制度の運用」や「人の裁量」によって、こうも差が出る現実に、心が折れそうになります。
外国人材の受け入れ制度の信頼を守るためにも、こうした事例にこそ、真剣な見直しと運用の改善が求められているのではないでしょうか。
最後に、あらためて皆様に問いかけたいのです。
登録支援機関とは、本当にその外国人の人生を思い、寄り添える人が担うべきではないでしょうか?
ただ“制度を使って儲けたい”という動機や、“コストを抑えるために自社内で形式的に済ませよう”といった姿勢では、真に人を育てることはできません。
特定技能制度の本質は、「人手不足対策」ではなく、「日本で育ち、日本の社会に貢献してくれる仲間を迎え入れること」であるはずです。