AIに質問すれば、
数秒で法令の要点や選択肢、リスクまで返ってくる時代になりました。

この時代において、
士業は「今まで通り」で本当に必要とされ続けるのでしょうか。

私は、
変わらなければ生き残れない職業の一つが士業だと感じています。

企業と士業の間にある“見えないズレ”

現場で企業と向き合っていると、
士業とのコミュニケーションに
強い違和感を覚える場面があります。

企業側が求めているのは、
完璧な正解や保証ではありません。
• この状況をどう判断すべきか
• どこまでなら可能か
• どんな書き方が現実的か

**「考え方」や「見解」**を知りたいのです。

しかし実際には、
• 前例はありますか
• 雛型はありますか
• 資料を全部揃えてください

といった言葉が先に返ってくることが少なくありません。

この時点で、
企業と士業の間には
大きなズレが生じています。

今回の具体的な事例

今回のケースは、
私が顧問としてではなく、お客様の代わりに
他の税理士事務所へ電話をした時の話です。

在留カードの審査書類として、
次のような内容を満たす書面が必要でした。
• 現在、会社は債務超過の状態にある
• ただし、売上は継続して立っている
• 事業は実態として稼働しており、継続性がある
• 中長期的には改善を見込める計画・見通しがある

これらは、
決算書および事業実態から確認できる事実です。

私がお願いしたことは、
非常にシンプルでした。

「経営上、問題ないという書面を作っていただければ良い」
ただ、それだけです。

特定のフォーマットや雛型も求めていません。
税理士、または中小企業診断士としての
**見解(所見)**を示していただければ十分でした。

それでも噛み合わなかった理由

返ってきたのは、
「電話で言われても困る」
「参考になるものはありますか」
という反応でした。

これは態度の問題ではありません。
“考えること”を求められた時の姿勢の問題です。

企業側は、
材料集めをお願いしたのではなく、
専門家としての思考を求めています。

それを
「前例がない」
「材料がない」
という理由で返してしまうと、
対話は成立しません。

責任についての誤解

本件について、
責任の所在は明確です。

仮に今後、
経営環境の変化等によって会社が倒産し、
在留資格を持つ本人が転職を余儀なくされたとしても、
その責任が税理士に及ぶことは一切ありません。

今回お願いしているのは、
将来を保証することでも、
結果責任を負ってもらうことでもありません。

あくまで、
「現時点の決算書と事業実態を踏まえた、専門家としての見解」
を、書面で示してほしい、
それだけの話です。

それを過度に恐れ、
思考そのものを止めてしまうとしたら、
それはリスク管理ではなく、
思考停止だと感じます。

AIが進歩する中で、士業に求められるもの

AIはすでに、
• 情報収集
• 法令整理
• 書式作成

を高速でこなします。

それでも士業が必要とされる理由は、
判断・対話・想像力にあります。
• 相手の立場を想像できるか
• 目的をくみ取れるか
• 現実的な落としどころを示せるか

ここができない士業は、
いずれAIに置き換えられていくでしょう。

最後に

これは士業批判ではありません。
士業への期待です。

資格があるかどうかではなく、
一緒に考えられるかどうか。

企業と士業のズレに気づき、
考え方をアップデートできる人だけが、
これからの時代も選ばれ続ける。

私は、そう考えています。