現場で感じ続けてきた、消えない違和感

外国人支援の現場に長く携わっていると、
制度の「建前」と「運用」の間で、強いジレンマを感じる瞬間が何度もあります。

私たちは、制度を知らないから悩んでいるのではありません。
制度を知っているからこそ、割り切れない場面に直面してきました。

具体例①

本来認められていないはずの行為が「通ってしまう」現実

特定技能1号では、
• 副業(Wワーク)は認められていません
• 無断退職や在留資格の前提を崩す行為は違反です

しかし現場では、
• 副業をしていた
• 勤務先を勝手に辞めた
• 以前の取引先で、別会社としてこっそり働いていた

――そのような事実があっても、
在留カードの更新が許可されるケースを私たちは実際に見てきました。

その結果、本人や周囲はこう考えます。

「入管が許可した=問題ない」
「できたということは、やっていいということ」

けれどそれは、
制度が正しいと認めたのではなく、見逃された可能性があるだけです。

具体例②

「人権」という言葉で、グレーが正当化されていく

制度上できないことを伝えると、
次に出てくる言葉があります。

「それは人権侵害だ」
「差別だ」
「かわいそうじゃないか」

しかし、
人権を守ることと、
制度を歪めることは別です。

感情論でルールをねじ曲げた結果、
• ルールを守る人が損をし
• 守らない人が得をする

そんな空気が、現場に広がっていきます。

具体例③

退職年金一時金が「貯金」のように扱われる現実

退職年金一時金は、
「日本を最終的に離れる人」への制度です。

それにもかかわらず、
• 3年働く
• 一時帰国して一時金を受け取る
• その後、再び日本で働く

という使われ方が、事実上黙認されるようになりました。

制度の趣旨と実態が乖離していても、
「制度上は間違っていない」という理由で受理される。

その積み重ねが、
制度の信頼そのものを少しずつ壊していると感じています。

書類だけ整えても、人は育たない

こうした背景がある中で、
「1万円で在留資格の手続きができます」
という営業の連絡を受けることがあります。

正直に言えば、
この仕事を現場で本気でやってきた人の言葉には聞こえません。

外国人支援は、
• 書類を出して終わり
• 通ったかどうかだけを見る仕事

ではありません。

生活、文化、価値観、
なぜそのルールがあるのか。

そこに向き合わず、
「やっているふり」だけをすれば、
人は育たず、
結果としてトラブルや犯罪に繋がっていく。

私たちは、それを何度も見てきました。

私たちが選んだ立場

私たちは、
グレーを広げる支援はしません。

たとえ
「できた前例」があっても、
「他がやっていても」、
制度の趣旨から外れることには線を引きます。

それは楽な道ではありません。
時には、
「古い考えだ」
「融通がきかない」
と言われることもあります。

それでも、
最後に責任を取るのは現場であり、人である
と私たちは知っています。

最後に

「できるかどうか」ではなく、
「やるべきかどうか」。

この問いに向き合い続けることこそが、
外国人支援の本質だと、私たちは考えています。