成熟度とは何か
ここで言う「成熟度」とは、
年齢や学歴、肩書きのことではありません。
• 自分の行動が、他人の時間・労力・お金にどう影響するかを想像できる
• 決断だけでなく、その後始末まで自分の責任として引き受けられる
• 逃げずに清算する
• 感謝を「言葉」ではなく「行動」で示せる
この力のことを、成熟度と呼んでいます。
生活支援の現場では、この成熟度の差が、国籍や職歴を超えてはっきりと表れます。
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成熟度が育ちにくい環境の共通点
① 責任が分散・吸収される環境
公務員、士業、組織の中の専門職などでは、
判断や手続きは行っても、その結果の「生活上の後始末」を自分が直接引き受ける場面は多くありません。
ミスやトラブルは
• 組織
• 制度
• マニュアル
• 上司
に吸収されやすい。
その結果、
自分の判断が誰かの生活にどんな負担を与えたかを体感する機会が少なくなることがあります。
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② 常に「判断する側」「教える側」にいる
長年、正解を出す側・指導する側でいると、
相手の立場に降りて考える必要がなくなっていきます。
依頼者は困って来る。
自分は答えを出す。
この関係が固定されると、
相手の時間や感情のコストを想像する力が育ちにくくなる。
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③ 一人で完結する働き方
社員を抱えず、短時間のパートや外注だけで回る環境では、
• 誰かのミスを自分が被る
• 誰かの生活を背負う
• 誰かの段取りを調整する
こうした経験が極端に少なくなります。
結果として、
自分が誰かの時間を奪う感覚が育ちにくい。
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④ 逃げても困らなかった成功体験
一番成熟度を下げるのはこれです。
• 関係を曖昧に終わらせても問題にならなかった
• 清算しなくても時間が解決してくれた
• 誰かが黙って引き受けてくれた
この経験が重なると、
「返さなくても大丈夫」という学習が起きます。
成熟度は、
不都合な結果を自分で引き受けた経験があって初めて育つものです。
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成熟度が育つ環境とは
逆に、成熟度が育つ環境には共通点があります。
• 自分の決断の結果を、自分で処理しなければならない
• 失敗すると、誰かの生活に直接影響が出る
• 人の段取り・感情・時間を調整しなければ仕事が回らない
• 逃げると、現実的な損失が発生する
経営、生活支援、現場責任者などは、
否応なくこの環境に置かれます。
だからこそ、
「人に頼む重さ」
「助けてもらうことのコスト」
が身体感覚として分かるようになります。
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生活支援の難しさ
生活支援の現場で一番難しいのは、
「助けること」と「考えさせること」の線引きです。
支援する側がやり過ぎると、
支援される側は考えなくなります。
本人がやるべきことまで肩代わりすれば、
成熟の機会を奪ってしまう。
振り返ると、
私自身も「相手のため」と思いながら、
早い段階で線を引くべきところを引けていなかったと感じます。
生活支援とは、
困りごとをすべて解決することではなく、
自分の人生に責任を持つ力を取り戻してもらうことなのだと思います。
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それでも、感謝は変わらない
成熟度が足りなかったとしても、
日本で働き、時間を過ごした事実は消えません。
学びの途中であることも含めて、人の人生です。
それでも――
日本で働いてくれてありがとう。
この経験が、いつか「考える力」につながることを願っています。








